社労士資格をこれから取得しようと考えている人は、

 

「社労士の資格を取得した後の資格を活かした働き方は?」

「社労士の仕事の需要や将来性は?」

「社労士と○○の資格はどっちを取得した方が良いか?」

 

といった疑問をよく聞きます。

そこで、この記事では、「社労士の仕事の需要や将来性」について、私が現場で感じたことを率直にお伝えしていきましょう。

社労士の仕事の需要について

中小・零細企業は社労士の仕事の宝庫!

社労士の仕事は、1号・2号・3号業務があります。

これらの需要は、昔から実はたくさんあったのです。

ただ、残念なことに企業がそれを社労士の仕事として認識していないのも現状です。

社労士の仕事として、やっと世の中に浸透してきた仕事は、1号・2号業務の賃金計算です。

大企業が人員や経費削減のために、社員全員分を一括して依頼するケースが増えてきましたが、3号業務は全くといってよいほど知られていません。

3号業務とは、企業の人事が行っている仕事全般の、人事・労務管理です。

大企業には、人事・労務に精通した人材が既にたくさんいますから社労士の出番はありません。

しかし、中小・零細企業の経営者は、元は職人さんだったり、自分一人でやってきた仕事がいつの間にか大きくなったり、とにかく人材教育や経営のプロではないのです。

だから、人事労務(3号業務)の専門家がいなくて、頭を悩ませている経営者が多いのです。

 

3号業務にこそ専門家である社労士のニーズは高い

人事・労務管理などの3号業務だけで社労士事務所の経営は成り立つのか?疑問視される人もいると思いますが、開業社労士であった筆者は、そこを狙って中小・零細企業ばかりとほとんど顧問契約中心に経営していました。

1号・2号業務の賃金計算だけは別途有料で、3号業務中心の顧問契約ですから、1号・2号業務の賃金計算は、無駄な出費にならないよう、できるだけ事務員さんを指導(会社に出向いても質問に対する指導は無料)して自分でやってもらっていました。

3号業務は、人事労務に関したコンサル業務を中心とした社労士業務なら何でもします。

ですから、まずクライアント様から「○○は社労士さんのお仕事になる?」と聞かれます。

 

主に行った2号業務(賃金計算を除く)と3号業務を以下に並べてみます。

ただし、1号業務と2号業務の賃金計算は、誰でもできるとはいっても、手続き・やり方のわからない事務員さんの指導・教育までは、筆者はサービスで行います。

それ以外を顧問契約にしたのは、どんな些細なことも相談しやすい環境を作りたかったからです。

 

◆2号業務

  • 就業規則の改定
  • 労使協定

 

◆3号業務

  • 採用業務(書類選考、面接、採用まで)
  • 社員教育のビジネスマナー研修
  • その他社員教育の企画
  • 福利厚生(中小企業なので、介護等で収入が減る社員の救済処置がないかなど)
  • 社員のお悩み相談や意見箱設置(労働環境に関すること。匿名で社長に報告)
  • スキルアップのための資格取得推奨
  • 行政の支援金・補助金申請のアドバイス
  • 社員のための給付金申請のアドバイス
  • 経営者の小さな疑問や素朴な疑問まで何でも相談(社労士としてできることを探す)
  • 特定社労士業務(まだ実際にあっせん代理人をしたことはない)

 

私のクライアント様はアットホームな会社が多く、会社に余裕はないけれど、少しでも社員のためにできることがないかと考え、福利厚生や行政の補助金や雇用関係の支援事業の相談を多く受けていました。

また、急成長した会社は、株式会社にする方法や、社員を雇って社員規則を作成して、労働環境を整える方法からの指導や手続きが必要です。

社労士は、そういった成長過程の中小・零細企業主のマネージャーのような存在だと筆者は思っています。

ただし、ここまで会社に入り込むには、経営者様との信頼関係がないとできません。

経営者様との信頼関係があれば、社労士は経営者様の頼もしい味方であり続けられます。

 

「社労士は台帳屋さん!?」企業が認識する恐るべき誤解

社労士の地位が低いのは、社労士を「台帳屋さん」と勘違いしている人が多いからだと思います。

そもそも、大きな法人社労士事務所が、率先して何社もの大企業の1号業務と2号業務の賃金計算のアウトソーシングに専念しているから、大企業に「社労士=台帳屋さん」という認識ができ上がってしまうのです。

しかも、その手段は、多少の事務経験がある人を派遣社員やパートで大量に雇い、まさに人海戦術を駆使して何万人もの仕事をさばいています。

これでは、「誰でもできます」と宣言しているようなものです。

このような認識は、呼び方にも現れています。

弁護士や司法書士や税理士は、「○○の先生」と出るのに対し、中小企業診断士、社労士、弁理士は、企業の担当者に指導しているにも拘わらず、「○○さん」、乱暴な顧客は「○○(たとえば「社労士」と呼び捨て)」といった感じです。

先生と呼ばれたいわけではありませんが、これは世の中にあまり仕事内容が浸透していない、まだ新しい資格だからでしょうか?

多分違います。中小企業診断士や弁理士はわかりませんが、社労士に限っていえば、地位や信頼度の低さの現れだと思います。

だから、大きな法人社労士事務所こそ、「人事・労務のコンサルタント」と認識してもらうために、3号業務にどんどん進出してほしいものです。

 

【考察】社労士の将来性は明るいのか?

『社労士の将来性は明るい』と思っています。

ただし、1号業務や2号業務の賃金計算のみに専念していては、多分先細りです。

だからこそ、これからの社労士は3号業務に進出しなければなりません。

AIが活躍する時代になったら、仕事を取られてしまう可能性もあります。

最近は、年金問題・労働環境などでメディアでも、専門家のゲストとして社労士が呼ばれて解説しています。

このように、社労士が人事・労務や年金のスペシャリストであることが、少しずつ世の中に知られてきた今がチャンスです。

法人社労士事務所も、大企業に進出して、1号・2号業務の賃金計算のアウトソーシングだけでなく、入社試験や中堅社員研修の心理テストによって、社員の能力や協調性・指導力を分析したり、少しずつ、あの手この手で3号業務に力を入れ始めました。

最近は、NTTの労災死亡事故の女性の問題が大きくとりあげられています。

これからは、企業の労災の意識も高まっていくでしょう。

特定社労士の活躍の場も増えていくかもしれません。

これからは、中小・零細企業の3号業務で、社労士が活躍する時代となる可能性が広がっているはずなのです。

 

社労士が経営者から信頼を獲得するにはダブルライセンスが早道!

経営者様の信頼を得ている社労士は、多かれ少なかれ、ダブルライセンスを持っています。

社労士の資格だけでは信頼してもらえないなんて、悲しいことです。

弁護士や司法書士や税理士と合同事務所を構えて、クライアントを共有している社労士もいます。他の士業の推薦でクライアントの信頼を得ているのです。

しかし、たとえダブルライセンスを取得や他の士業の推薦だとしても、クライアント様と人間関係を作り、経営者様の絶大な信頼を勝ち取れば、後は口コミが口コミを呼び少しずつ経営は楽になります。

中小・零細企業は、必ず業種によって組合や商工会議所のおつきあいがありますので、口コミはクライアント獲得の大きな入り口なのです。

 

社労士の地位を上げるには、クライアントの会社に食い込み信頼関係を築くこと

最近、とても頼もしい若い社労士さんに会いました。

私は、彼のような若い社労士が、社労士の地位向上を実現してくれるかもしれないと思いました。

「それはどういうこと?」と思った方に根拠のない個人的見解ではありますが、説明します。

 

社労士には、個別労働紛争解決制度の代理人になる権限があります。

しかし、実際特定社労士の資格を持っていても、実際この分野に積極的に取り組んでいる社労士は少なく、開業社労士の「名刺のハク付け」になっているに過ぎないのが現状です。

理由は、企業を敵に回し、企業の依頼に響くことを恐れたり、労働者の人生を左右する争いを好まなかったり、とさまざまでしょう。

そんな中で、「どうして特定社労士分野に進出しないのか?特定社労士で代理人になってがっぽりもうけられるのに!」という勢いのある若い社労士さんに出会ったことがあります。

個別労働紛争でがっぽり稼ぐのは、個別労働紛争解決制度の趣旨に反しますので、代理人料金は、労働者がお願いしやすい料金にとどめて欲しいところではありますが、それでも、彼の社労士の地位を上げ、利益を得ようという意気込みがないと、クライアント様の会社に食い込み、信頼関係を築くことはできないでしょう。

これからは、このような勢いのある若い社労士さんがどんどん増えて、社労士の地位向上に尽力してくれるのではないかと期待し、嬉しくなりました。

保守的なベテラン社労士の先輩方よりも、若い社労士さんの無謀な挑戦力の方が、社労士全体の意識を変えていってくれるような気がします。