厚生労働省データ社労士の仕事に、特定社労士の個別労働紛争の代理権が法で追加されてから、司法試験よりも受験しやすいということなのか、20代~30代の若い世代に、社労士の受験者が増加しました。

平成28年の社労士試験の合格者数の54.9%が社会人で、学生は0.6%でした。

しかも、20代~30代が40.5%を占めています。そのうち30代が31.4%を占めています。

社会保険労務士試験合格者の年齢別・職業別構成データ(厚生労働省)

このデータからも、社労士試験は社会人がチャレンジしやすい試験だといえるでしょう。

つまり、仕事をしながら資格取得の受験勉強をするなら、司法試験よりも社労士試験がおすすめです。

なぜなら社労士試験の受験は、会社帰りに塾に通ったり通信教育でチャレンジできますが、新司法試験の受験は法科大学院に合格して通い、卒業してからのチャレンジになります。

だから新司法試験の場合、まず法科大学院に合格して、その通学のために一旦会社を2年~3年休職あるいは退職が必須です。

しかも卒業してはじめて受験資格が得られ、新司法試験はそれからです。

このような新司法試験受験のシステムが、社労士を含みあらゆる会社員にチャレンジを困難にしています。

このように、受験システムの全く異なる資格ですが、「どっちの資格を取得するのが有利?」と疑問に思う方のために、この記事では、2つの資格の難易度と違いについて検証してみましょう。

 

司法試験と社労士試験の難易度の比較

新司法試験と社労士試験の難易度を総合的に判断すると、司法試験の方が難しいです

しかし、合格率の数字だけ見ると新司法試験25%(日本経済新聞Web刊2017.10.13より)、社労士試験4.4%(厚生労働省発表)と、圧倒的に社労士試験の方が難易度が高いように見えます。

でも、新司法試験には、数字だけでは計りきれない難しさがありますので、新司法試験がどんなに難しいかを解説しますね。

まず、弁護士と社労士では、業務の範囲の広さ比べものにならないほど違うのですから、試験範囲の広さも比べようがありません。

一方、社労士は労働基準法に精通し、あらゆる労働問題と社会保険諸法令など、労働者が入社して退職するまでに関する、会社と労働者のあらゆる法律のスペシャリストです。

社労士の方が、圧倒的に法律範囲が狭いですよね。

しかも、司法試験の合格率25%というのは、新司法試験受験者全員の合格者の比率です。法科大学院によっては、0%~50%なのです。

それなら、司法試験に合格しやすい法科大学院に入学する必要が出てきます。

ちなみに、国が圧倒的に合格に期待を寄せている、国立大学の中でも旧帝大の法科大学院の合格率を比較して見ましょう。経済的にも私立よりも国立の方が圧倒的にお得です。

 

【図表】旧帝大の合格率

大学名 合格者数 / 受験者数(出願者数) 合格率(合格者数/受験者数)
北海道大学 29人 / 118人(138人) 24.6%
東北大学 18人 / 69人(81人) 26.1%
東京大学 134人 / 296人(271人) 49.4%
名古屋大学 28人 / 118人(137人) 23.7%
京都大学 111人 / 222人(242人) 50%
大阪大学 66人 / 162人(180人) 40.7%
九州大学 17人 / 96人(99人) 19.3%

法科大学院等別合格者数等[PDF:229KB]|法務省」のデータより抜粋と計算

 

新司法試験に合格しやすい法科大学院は、偏差値も高く、受験勉強が1番の難関です。

しかし、苦労して法科大学院に合格しても、上記表のように、合格率は半分以下です。

不合格のリスクを考えると、社会人受験はどうしても二の足を踏んでしまいがちです。

 

そこで、ロースクールに通えない人の救済処置として、予備試験という法科大学院に通わなくても受験できる司法試験ができました。

要するに高校を卒業していない人が、大学受験のために高校を卒業したとみなす「大学資格検定(通称:大検)」の法科大学院版です。

この予備試験に合格できれば、司法試験の受験資格ができますので、社会人におすすめです。

ちなみに予備試験合格者の司法試験合格率は、72.5%(受験者数400人/合格者数290人)と高い数値を誇っています。

だったら、予備試験の難易度はかなり高そうですが、チャレンジして合格できたら新司法試験にチャレンジする方が、社会人にはリスクが少ないですね。

 

弁護士と社労士の違い

弁護士と社労士の違いを、理想論で述べてみましょう。

弁護士は、あらゆる問題に対して、徹底的に依頼者の利益のために尽力する業務です。

社労士は、労働者と会社の双方のために働きます。労働・社会諸法令に基づく事務手続きと、経営陣と労働者の双方の立場や意見を聞き、円滑に問題を解決し、より良い労働環境の企業になるように尽力します。

もっと極端に言い換えると、弁護士は雇い主の利益のためだけに日本のあらゆる法律を駆使して働き、他のことは一切考えてはいけません。

弁護士の能力によって、依頼者の人生を左右することもある、責任の重い仕事です。

一方、社労士は企業の経営陣と労働者双方のことを考えて動き、社労士の権限は企業内の手続きや諸問題に限ります。会社内の労働環境を良好に保ち、経営陣と労働者の幸せのために働きます。

 

このように、弁護士と社労士は、働く分野も目的もまったく異なります。

ただし、これはあくまで理想論です。

どのような弁護士になり、どのような社労士になるのも、ライセンスを持った人間の人柄や価値観・生き方に左右されるといえるでしょう。

 

弁護士と社労士、どっちを取得した方が良いのか?

大学の、資格講座の講師になったときに、筆者が受けたことのある質問です。

筆者が思う答えはひとつ。どちらが自分に合っているかです。

性格や考え方、心の強さや生き方も人それぞれで、それは表面的なものではなく、その人の内面の本当の姿で考えないといけません。

ですから、どっちを取得した方が良いかを他人に問うのは、愚の骨頂です。

自分で考えるしかないのです。

 

どちらも法律で認められた難易度の高い特別職です。

筆者の知人に、弁護士一家に生まれて、弁護士になるべく育てられ、弁護士になったものの、優しすぎて、裁判に負けて依頼者に迷惑をかけたと弁護士を辞めた人がいます。

このような優しすぎて人の気持ちに敏感な人は、弁護士に向きません。

優しくても、弁護士としての仕事に誇りを持ち、辛さに耐える強い信念がないと、勝つか負けるかしかない弁護士の世界ではやっていけません。

経営コンサル専門の弁護士だって、結果を残さないとクビになります。

社労士が関わる法律は、労働環境を良くし、労働者が働きやすい労働環境を作り、会社としても利益を出すよう、どちらかというと労働者側の弱者を守る法律に従う士業です。

仕事の目的が全く違うのです。

成功すれば、どちらも1,000万円以上の報酬を得られる一方、年収200万円以下の超貧乏の弁護士や社労士もいます。

安定を求めるなら、勤務社労士をおすすめしますが、それは普通のサラリーマンと同じです。

 

社労士の資格も弁護士の資格も、国が定める難関国家資格です。自分の性格や生きる目的や価値観をよく考えて、どちらの資格にチャレンジするかをじっくり考えて決めるのがおすすめです。

難易度は次の問題です。強い信念をともなった「願えば叶う!」の意気込みは、どんな難関資格も突破できる力を持っています。