社会保険労務士試験に合格したら、突然開業への道を選ぶ人もいますが、そのような人が全てではありません。就職という安定した道を選びたい人もたくさんいるはず。

しかし、資格をアピールするだけで企業の中途採用の内定を受け取れる人と、簡単にはいかない人がいます。

社労士資格取得者にはどのような就職先があるのでしょうか?

この記事では、社労士に人気の高い就職先と、その求人の採用を確実に手にする方法について解説します。

 

社労士に人気の高い就職先ベスト3

社労士資格取得者に人気の就職先を紹介します。

就職先1位|できるだけ大手企業の人事労務

社労士に人気の高い花形の就職先は、何といっても『企業の人事・労務のコンサルタント』でしょう。

大手企業の社内規定による給与ですから、サラリーマンの年収となります。

大企業の人事の求人は、応募資格のレベルが高く、社労士の資格を必要としません。

「40~55歳 英語力必須 人事経験者」「人事部管理職経験者」などです。

それでも年収は800万円以上が一般的で、1,000万円~1,500万円という一部上場企業の人事部の求人もあります。

非公開求人で転職エージェントにがんばってもらって、応募資格に近いレベルに自分のスキルを近づける必要があります。

しかし、人事・労務管理には、社労士のポテンシャルが大いに役立つので、社労士を武器に挑んでみる価値はあります。

社労士の実績を積むためには、社労士の免許登録をしておいた方がおすすめです。社労士の知識が常に最新に保てますし、異業種交流で人脈もできます。

他士業の顧問先への採用のコネができる可能性もあります。

そのためには、社労士事務所にまず就職して、3号業務の実績を積むのがおすすめです。

ただし、講演をしたり、著書を出したり、普通の社労士と違った人事・労務に特化した個性を生めるような大きな社労士事務所に就職しましょう。

社労士には関係の無いですが、大企業に英語力は必須条件なので、英語力も身につけておく必要もあります。

十分に実績を積んだらあとは、転職エージェント経由で大企業の人事の非公開求人を狙いましょう。

 

就職先2位|経営コンサルタント会社

さまざまな士業を集めた経営コンサルタント会社が社労士の就職先としておすすめです。

経営コンサルタント会社に勤める社労士の推定年収は『650万円~700万円』程度。

比較的高年収の部類に入るので、採用される社労士は能力重視で、企業は即戦力を求めています。

ですので、採用を手にするのは狭き門となることが想定されます。

複数の士業が集まっているので、実力がないと置いていかれる厳しい業界です。

ですが、社労士としてのポテンシャルが十分に発揮できる職場には間違いないので、満足できる就職先であること間違いなしです。

 

経営コンサルタント会社の求人探しは、転職エージェント経由がおすすめです。

転職エージェントでは、『非公開求人』という一般には出回らない条件の良い求人が多数あるからです。

非公開求人の年収は、経営コンサルタント会社の規模によりますが、一般企業よりも待遇や条件が良いのが特徴です。

非公開求人は、転職エージェントに登録しないと分からないようになってるので、経営コンサルタント会社への応募を考えているなら、社労士求人に強い転職エージェントに複数登録しておく事をおすすめします。

 

非公開求人の書類選考通過から面接へ→採用に向けて

経営コンサルタントでは、社外での社労士業務となり、「業として報酬を得る」に該当します。

なので、経営コンサルタントに就職希望の場合には、社労士免許登録を済ませておくことが必須となります。

社労士と名乗って社外のクライアントに経営のコンサルティングをして報酬を得るのですから、免許登録がまだの場合は、履歴書に「免許登録申請中」と書いておきましょう。

「採用されたら免許登録します」では、書類選考の時点で「意気込み不足」の印象を受けてしまいます。

さらに、経営コンサルタント会社は、多数の士業が集まっています。

自分のスキルを少しでもアップして、多方面に使える社労士になっておきましょう。

そのためのダブルライセンスはおすすめです。

経営コンサルタントの場合は、税理士やFP1級がおすすめです。

FPは2級で活躍している人も多くいますが、大企業相手の経営コンサルの場合は、銀行の融資課に勝つほどの説得材料の案を出す実力も必要なので、そのシミュレーションができる1級の方がおすすめです。

 

就職先3位|社労士事務所

就職先の斡旋までしてくれる社労士会の強い地域では、「○○に強い社労士事務所に勤務したい」という希望を伝えることもできますので、社労士会に履歴書を送っておくのもおすすめです。

社労士会が就職先の斡旋にまで関わってくれない地域では、社労士事務所の規模によって、求人の出し方が違います。

小さな社労士事務所は紹介料が無料であるハローワークに求人を出し、経済的に少し余裕がある中堅の社労士事務所は転職サイトや転職エージェントに求人を出します。

 

① 実務経験がない社労士の就職先は小さな社労士事務所がおすすめ

社労士業務に関して「労働社会保険諸法令関係事務指定講習」の修了証という厚生労働大臣お墨付きの「みなし実務経験2年以上」で社労士登録をした人は、個人的見解ですが、小さな社労士事務所がおすすめです。

社労士専門の求人サイトはたくさんありますが、「労働社会保険諸法令関係事務指定講習修了」を資格覧に書いても、職務経歴の欄に実務経験がなければ書類選考の時点で不採用です。

ですから、社労士業務の基礎から実務経験を積みましょう。

事務指定講習は全て手書きですが、実務はほとんどパソコンです。

手順はわかっていても、社労士事務所専用のソフトがありますので、その操作方法の習得から始めなければなりません。

社労士修行は3年もすれば一人前になれるでしょう。

 

② 3年未満の人事・総務の経験がある人は中堅社労士事務所がおすすめ

勤怠や賃金計算だけでも経験があるなら、中堅の個人事業主社労士事務所をおすすめします。

理由を説明しましょう。

就職先に企業の人事を希望するなら、とにかく実務経験が必要です。

企業は、実務経験があれば資格はいらないくらい今までの職歴がとにかく重視されます。

しかし、実務経験が豊富なら、社労士資格が法律にも詳しいということを立証してくれますので、非常に有利です。

だから、たとえば、今まで出退勤や賃金計算しかしてこなかったのに、社労士資格を取得したから、勤務社労士として、人事部に希望を出しても、書類選考で落とされてしまいます。

せっかく社労士資格を取得したのだから、人事・労務管理や3号業務全般に従事したいと思うなら、実務経験を積んでからでないと、あなたの希望は叶わないのです。

そこで、「中堅の社労士事務所勤務」の実績が有利となります。

社労士としての業務全般に長けていると判断してもらえるからです。

1年見習いで我慢したら、早い人は2年目から担当クライアントを任せてもらえます。3年目では、既に一人前の社労士です。

社労士事務所の中心業務の見分け方は、「人事・総務経験優遇」「社労士資格者優遇」の文字があって、「従業員の人数は4人~5人」とあるところを選びましょう。

パートではなく正社員募集であること、男性社員がいることもおすすめです。

パート(短時間労働)ばかりの場合は、賃金計算や勤怠が主な仕事だからです。

 

これが、複数の顧問契約があり、3号業務を多く請け負っている社労士事務所の特徴だと筆者は思っています。

 

その他の社労士の主な就職先一覧

  • 労働基準監督署(1年更新の嘱託職員)→実績づくりとして強い
  • ハローワーク(1年更新の嘱託職員)→実績づくりとして強い
  • 全国社会保険協会(嘱託職員やパート職員)→実績づくりとして強い
  • 行政の保健福祉課(1年更新の嘱託職員)→実績づくりとして強い
  • 財団法人の健康保険組合→1号・2号業務のみ→実績づくり
  • 老人ホーム→少し経験があれば3号業務の宝庫(みなし経験なら1号・2号業務中心)
  • 介護福祉施設→少し経験があれば3号業務の宝庫(みなし経験なら1号・2号業務中心)
  • 損害保険を扱う代理店→保険の資格を取得して保険会社の人事への足がかりに

 

これらの職場は、次のステップアップのための実績づくりに利用しやすい職場です。年収としてはあまり大きく期待できませんが、修業時代だと3年以上はがんばることをおすすめします。

 

経歴に関係なく社労士資格活かしたいなら避けるべき就職先

避けた方が良い就職先は、他士業事務所の社労士部門や他士業との合同事務所です。

一旦合同事務所で働き始めると、社労士は「台帳やさん」で終わってしまうことが多いからです。

理由を解説しましょう。

実情として他士業との合同事務所に多いのは、弁護士あるいは司法書士・税理士・社労士の組み合わせが多いです。

この組み合わせは、企業に、人事労務管理・経営・法務についてトータルコーディネートとして信頼は得られやすいでしょう。

しかし、企業にコンサルタントを任されるのは、弁護士・司法書士・税理士となるのは目に見えています。

企業は、社労士の人事コンサルタント業務の専門性を知りませんので、社労士は1号業務・2号業務(独占業務)担当となります。

「独占業務」という言葉の響きが、社労士の得意業務という誤解を生んでいるのではないかと筆者は思います。

他士業の人たちが社労士と組むのは、社労士の独占業務を狙っているからに過ぎず、自分たちが企業のコンサルタントをするつもりでいることを認識しましょう。

そうなると、社労士が3号業務で活躍する機会は無いと思いましょう。

ただし、社労士業務の経験が事務指定講習のみなし経験しかない社労士が、1号業務・2号業務の経験を積むためだけの腰掛けとして利用するなら良いかもしれません。

しかし、一般的に気の合った仲間同士で立ち上げているので、仲間意識とクライアント数の誘惑には勝つのは至難の業です。

それに現実問題として、弁護士や税理士がバックにいるというクライアント信用効果は絶大なのです。

 

資格取得時に既に社労士業務に5年以上の経験がある社労士の優良企業求人の見つけ方

大企業の人事・総務部や経営コンサルタント会社や大きな社労士事務所や法人社労士事務所などで、待遇の良い条件の求人は、多くの場合非公開求人である事を知っておきましょう。

間違っても、ハローワークには求人を出しません。

希望の業種の求人を多く扱っている複数の転職エージェントに登録して、自分に合った就職先の候補が見つかったという担当者からの連絡を待ってみましょう。

その他、多くの転職エージェントの公開求人でも、企業の場合は一概に言えませんが、社労士事務所や士業の事務所の求人の場合は、オフィスの写真や所長の写真が掲載されていることも多いので、自分が気に入った就職先の雰囲気を知るのも大切です。

とくに人材の写真がある場合は、どんな人を採用するかで、就職先の会社の人事の考え方や雰囲気がある程度出るものです。

写真だけではわからない、という部分も多いのですが、就職先の職場環境は一番気になるところですから、写真を見られるだけでも安心できます。

就職先のお世話をしてくれる転職エージェントの担当者とは、可能な限り会って話をすることをおすすめします。

自分がどんな人間か、自分の特技や経験を企業の人事に話すように転職エージェントの担当者に伝え、就職先の小さな希望まで余すところなく伝えておきましょう。

あとは担当者があなたのことを就職候補先の採用担当者にしっかりと代弁してくれることを期待しましょう。

 

自分が望む就職先をしっかりイメージしよう

自分がどんな仕事をどんな職場環境でしたいかは一番重要です。

一生の安定を望むなら、大企業の人事を目指しましょう。

社労士として一国一城の主を目指すなら、少し遠回りをしてでも、経営手腕から修行を積むことをおすすめします。

経営コンサルタント会社で社労士の3号業務を主として行いたいなら、他の士業に負けないダブルライセンスをおすすめします。ダブルライセンスは税理士が一番ですが、税理士資格は長年かかってしまうので、筆者はFP1級をおすすめします。

FPの試験は、年3回ありますので、転職活動中でもがんばれば取得可能です。

また、人事のプロになりたいなら、人事関係の雑誌や書籍をできる多く読むように心がけることをおすすめします。

せっかく社労士資格を獲得したのですから、最高に活かせる職場に就けるよう、できる努力は最大限に行いましょう。その努力は必ず報われます。